動物の寿命と体のサイズには正の相関があるのが一般に知られています[2]。例えばネズミは3年程度でゾウは60年程度生きます。ところが同じサイズのネズミでもハダカデバネズミはげっ歯類で最長の30年生きます。体重ベースでいうと10倍もの長生きをする長寿の生き物としてみることができます。
ハダカデバネズミは癌になりにくい
このハダカデバネズミは高齢になっても癌になることが非常に少ないことがわかっています[1]。癌はDNAの異常や染色体の異常が修復できなくなると増えてきますがハダカデバネズミは一般に癌の一因とされている活性酸素ストレスが高度に発現していることや老化の指標であるテロメアが短縮していることも知られています[1]。DNAを傷つけるようなストレスを与えてもDNAやタンパク質を正常に維持できる能力を獲得していてこれが癌の発生を抑えていると考えられます。
ハダカデバネズミは地下で巣を作って暮らしているので低酸素状態で進化していると考えられます。以前記事にしていますが低酸素状態で活性化するHIF-1という遺伝子が関係している可能性もあります。
HIF-1のバランス次第で適度な活性酸素がミトコンドリアで発生し抗酸化物質の分泌を増やして逆に活性酸素からDNAや染色体を守り正常なタンパク質を生み出す仕組みがあり『ミトホルミーシス』と呼ばれています。
このハダカデバネズミの長寿から考えるのは一般に解糖系を上げてしまう低酸素状態でも活性酸素耐性を付けてDNAや染色体を保護し正常なタンパク質を作り続け癌を減らして長寿になる方法もあるかもしれないということです。アンデス山脈などの高地で暮らす人も進化していくと低地で暮らす人たちとの間に癌の発生率などに違いが出るかもしれませんね。
参考文献: