オートファジーで長寿効果を働かせる方法

山岳地帯

オートファジーが起こると長寿になるという記事を以前書きましたがメトフォルミンやスペルミジンなどの物質摂取だけではなくそもそもどういう状態になるとオートファジーが起こるのか?について科学論文で検証してみようと思います。

ミトコンドリアのオートファジーを活性化すると長寿になるのか?

ミトコンドリアのオートファジーを活性化すると長寿になるのか?
以前ミトコンドリアから出る活性酸素が増えると寿命が短くなるという記事を書きましたが、加齢とともにミトコンドリアから放出される...

下の図が分かりやすいと思いましたので引用して載せていますが、低酸素状態の時とエネルギーが減っているときにオートファジーが起こることが分かります。

低酸素とエネルギー低下によるオートファジーの発生 Bohensky J et al. [1]

飢餓状態、例えば白米やパンなどの糖質を摂っていないとかタンパク質を食べない日などではAMPKという酵素が活性化してmTOR(エムトール)を抑制します。mTORは抑制すると長寿になるのですがその仕組みはオートファジーを誘導することが知られています。

もう一つのオートファジーを誘導する低酸素状態で発動するHIF-1(低酸素誘導因子)は山岳地帯に住む人などに多くなります。HIF-1はAMPK経路でオートファジーを発動する経路と直接オートファジーを誘導する経路の二つがあります。

このようにヒトにはエネルギー状態を感知する仕組みがあってエネルギーが足りなくなるとオートファジーを起こす仕組みがあるということです。

ただ注意しなければならないのが低酸素になると発動するHIF-1です。下の図にあるように癌の発生リスクも上げるためオートファジーを引き起こして長寿になる力との諸刃の剣となっています。HIF-1の亢進は酸素がなくてもエネルギーを得られるように糖を分解してエネルギーを得る『解糖系』を活性化するため癌の発育にとって都合がよいと考えられます。

HIF-1の過剰発現で癌が発育する Luo W et al. [2]

したがって山岳地帯に住む人以外はオートファジーで長寿になるためには糖質制限やタンパク質制限(1週間に1日程度)経路でAMPKを増やすほうが安全だと言えます。

参考文献:

  1. Chondrocyte autophagy is stimulated by HIF-1 dependent AMPK activation and mTOR suppression. Bohensky J et al., Pediatr Nephrol. 2010 Apr;25(4):633-42. doi: 10.1007/s00467-009-1310-y. Epub 2009 Oct 15.
  2. Pyruvate kinase M2 regulates glucose metabolism by functioning as a coactivator for hypoxia-inducible factor 1 in cancer cells. Luo W et al., Oncotarget. 2011 Jul;2(7):551-6.

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