
以前ミトコンドリアから出る活性酸素が増えると寿命が短くなるという記事を書きましたが、加齢とともにミトコンドリアから放出される活性酸素の量が増えてきます。これはミトコンドリアの機能が劣化した結果だと考えられています。
活性酸素を減らすと長寿になるのか?
活性酸素は老化の原因と言われて久しいですがこの記事では活性酸素が増えると寿命が短くなるのか寿命の観点から科学的に検証してみた...
では機能低下したミトコンドリアを取り除くと長寿になるのでしょうか?あるいはミトコンドリアをリフレッシュする方法はないのでしょうか?
ミトコンドリアの品質を改善すると長寿になる
ミトコンドリアをオートファジーで排除する『ミトファジー』は活性酸素が中程度放出するようになると起こります[4]がミトコンドリアの機能が落ちてきて活性酸素をより多く輩出するようになるとミトコンドリアの品質を改善する仕組みが細胞にあります。
まず機能低下したミトコンドリア内のタンパク質は活性酸素で劣化していますのでその機能低下したタンパク質を取り除いてみると長生きできるか調べた報告があり、ショウジョウバエの実験では寿命が約30%延びました[1]。
次にミトコンドリアを含む貪食作用『オートファジー』を誘導してみると長寿になるのか調べた報告ではマウスにオートファジーを強制的に起こさせる遺伝子を組み込んだところ寿命が17.2%延びました[2]。
このようにオートファジーには劣化タンパク質の排除と細胞内のミトコンドリアなどの小器官(オルガネラ)が劣化した場合の排除が含まれます。オートファジーはミトコンドリアのタンパク質を改善し老化したミトコンドリアを除去することで寿命を延ばします[3]。
細胞内オートファジーの様子。
オートファジーを誘導する薬剤や栄養素
オートファジーは飢餓状態で起こるため糖質制限やタンパク質を減らすなどしないと通常は起こらないのですが薬や栄養素でオートファジーを意図的に誘導することも可能です。
オートファジーを促進する薬剤にはメトフォルミンとスペルミジンなどいくつかの物質が見つかっています。
メトフォルミンの長寿効果
現在メトフォルミンの長寿効果を確かめるためアメリカで大規模な疫学調査が進行中です。
今回は糖尿病の薬として使わ...
スペルミジンの長寿作用
長寿作用を持つ成分は何種類か報告されていますが、今回考察するスペルミジンも長寿作用があり、天然のポリアミンという分類...
まとめると、ミトコンドリアは老化してくると活性酸素をたくさん出すようになりある程度増えるとミトコンドリア自体や劣化したタンパク質を分解するオートファジーが起こりミトコンドリアの品質を保つようになり、その結果長生きすることになるということです。
参考文献:
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Overexpression of the small mitochondrial Hsp22 extends Drosophila life span and increases resistance to oxidative stress. Morrow G et al., FASEB J. 2004 Mar;18(3):598-9. Epub 2004 Jan 20.
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Overexpression of Atg5 in mice activates autophagy and extends lifespan. Pyo JO et al., Nat Commun. 2013;4:2300. doi: 10.1038/ncomms3300.
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Autophagy proteins LC3B, ATG5 and ATG12 participate in quality control after mitochondrial damage and influence lifespan. Mai S et al., Autophagy. 2012 Jan;8(1):47-62. doi: 10.4161/auto.8.1.18174. Epub 2012 Jan 1.
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Mitophagy is triggered by mild oxidative stress in a mitochondrial fission dependent manner. Frank M et al., Biochim Biophys Acta. 2012 Dec;1823(12):2297-310. doi: 10.1016/j.bbamcr.2012.08.007. Epub 2012 Aug 16.