レスベラトロールの長寿効果

レスベラトロールの長寿効果

レスベラトロールは長寿効果がある成分としてテレビなどで紹介されたため一時期有名になった成分です。

私も6年位前に抗加齢医学の専門医の勉強をしていた時、レスベラトロールへの科学的興味が私の顔のアンチエイジング医学の出発点になっています。

今回はレスベラトロールの長寿作用の科学的知見を最新情報で考察してみます。

サーチュイン遺伝子の活性化

レスベラトロールはブドウの皮やピーナッツの皮、イタドリなどの植物から抽出されるポリフェノールです。

アカゲザルの実験からカロリー制限は顔を若く保ち、寿命を延ばすことが知られていますが、実際にやってみて腹八分目は食欲を抑えるのが大変です。

そこで、カロリー制限しなくても同様の長寿作用が得られる食べ物はないかと考えるのが人間です。

レスベラトロールの摂取はサーチュイン遺伝子(SIR)を活性化させる作用があります。

サーチュインは長寿作用を持つ効果に深い関わりがありアンチエイジング作用の一つの有力な仕組みと考えられています。

ヒトのサーチュイン遺伝子はSIR1からSIR7まで見つかっています。

SIR1はオートファジーの誘導、SIR2はDNAの安定性を高め[8]、SIR3はミトコンドリアの活性酸素発生の抑制[9]、SIR4はテロメアの伸長に必要[10]などどれも長寿効果に関連する作用ばかりです。

レスベラトロール長寿作用の仕組み

mTORを抑制することによるオートファジー効果

最も調べられているのがSIR1でmTOR(エムトール)というオートファジーによる若返りのスイッチをオンにします[1][2]。

通常、mTORを抑制してオートファジーを起こすにはタンパク質を控えたり[7]カロリー制限することで起こります。

mTOR酵素を抑制することで若返りのスイッチがオンになるため何とかmTOR抑制する成分や方法を探すわけです。

逆にこのmTORを活性化させるのが糖質や牛乳に含まれるロイシン、フライドポテトなど高温処理された油に含まれるトランス脂肪酸などで皮脂増加によるニキビがふえるため見た目にも良くないです。

レスベラトロールもSIR1を活性化してmTORを抑制するのでオートファジーが働いて細胞内がきれいになり正常な量と質のタンパク質が生合成されるようになります。

年をとっても正常なタンパク質が生合成されるということが長寿作用につながります。

ですのでレスベラトロールはカロリー制限のようにSIR1を活性化させてオートファジーを促進するため長寿になると考えられます[4][5]。

ミトコンドリアの数と質の向上

サーチュイン遺伝子の活性化はミトコンドリアに対してアンチエイジング的に良い効果をもたらします。

サーチュイン遺伝子で活性化されるSIR1はミトコンドリアの数を増やします[6]し活性酸素の発生を抑えて[9]細胞の質の劣化を防いでいます。

ミトコンドリアは身体のエネルギーを生み出すエンジンですのでミトコンドリアの数と質を高めることはコラーゲン繊維や弾性繊維も効率よく産生されるため顔のハリを保ち毛穴などの目立ちを減らすなど抗老化作用が体全体だけでなく顔に現れます。

mTORを抑制してオートファジーを引き起こすことで正常なタンパク質を作り出す細胞にリフレッシュし、ミトコンドリアの数と質が向上して十分な量のタンパク質を生合成する。

これが長寿効果につながっていると考えられます。

まとめ

  • レスベラトロールはサーチュイン遺伝子を活性化しやすくする。
  • サーチュイン遺伝子はmTORを抑制する
  • サーチュイン遺伝子はミトコンドリアの数と質を向上する
  • 正常で十分な量のタンパク質を生合成できるように細胞機能を改善する

参考文献:

  1. Resveratrol inhibits mTOR signaling by promoting the interaction between mTOR and DEPTOR. Liu M et al., J Biol Chem. 2010 Nov 19;285(47):36387-94. doi: 10.1074/jbc.M110.169284. Epub 2010 Sep 17.

  2. SIRT1 negatively regulates the mammalian target of rapamycin. Ghosh HS et al., PLoS One. 2010 Feb 15;5(2):e9199. doi: 10.1371/journal.pone.0009199.

  3. Activation of Sirt1 by resveratrol inhibits TNF-α induced inflammation in fibroblasts. Zhu X et al., PLoS One. 2011;6(11):e27081. doi: 10.1371/journal.pone.0027081. Epub 2011 Nov 1.

  4. Caloric restriction and resveratrol promote longevity through the Sirtuin-1-dependent induction of autophagy. Morselli E et al., Cell Death Dis. 2010;1:e10. doi: 10.1038/cddis.2009.8.

  5. The life span-prolonging effect of sirtuin-1 is mediated by autophagy. Morselli E et al., Autophagy. 2010 Jan;6(1):186-8. Epub 2010 Jan 2.

  6. Sirtuins in aging and disease. Guarente L, Cold Spring Harb Symp Quant Biol. 2007;72:483-8. doi: 10.1101/sqb.2007.72.024.

  7. Insulin and amino-acid regulation of mTOR signaling and kinase activity through the Rheb GTPase. Avruch J et al., Oncogene. 2006 Oct 16;25(48):6361-72.

  8. SIR2 suppresses replication gaps and genome instability by balancing replication between repetitive and unique sequences. Foss EJ et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2017 Jan 17;114(3):552-557. doi: 10.1073/pnas.1614781114. Epub 2017 Jan 3.

  9. SIRT3 reverses aging-associated degeneration. Brown K et al., Cell Rep. 2013 Feb 21;3(2):319-27. doi: 10.1016/j.celrep.2013.01.005. Epub 2013 Jan 31.

  10. The Ku subunit of telomerase binds Sir4 to recruit telomerase to lengthen telomeres in S. cerevisiae. Hass EP et al., Elife. 2015 Jul 28;4. doi: 10.7554/eLife.07750.

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