合成界面活性剤は洗顔剤やシャンプーなど日用品に長年多用されてきましたが、皮膚の角質層を壊し浸透することによって生きた皮膚細胞にも毒性を発揮することが知られています。歯磨き粉にはラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム)が配合されていますが皮膚と異なり粘膜である口腔内、あるいは飲み込んでしまうことによる腸管への慢性的な影響で寿命が縮まったりしないのか興味がわきましたので医学論文で調べてみることにしました。
合成界面活性剤は海洋生物にとっても毒
合成界面活性剤はクリームや乳液、クレンジング剤や食器洗い洗剤など多くの日用品に用いられており慢性的にさらされている状態です。これは人間の皮膚や髪の毛にとってよくないだけでなく魚などの水生動物にも毒性のある物質をばらまいていることになります[1]。鯛の一種であるヨーロッパヘダイの卵で合成界面活性剤の毒性を調べた報告もあります。現在人間が使用する日用品からの毒物がこのように海の生物への害も出始めて問題になっております。合成界面活性剤の多用はパラベンやフェノキシエタノールなどの防腐剤による耐性菌の発現とともに環境に優しくない日用品成分となっています。
合成界面活性剤の慢性的摂取は寿命を短くする
では歯磨き粉やシャンプーに入っている合成界面活性剤を毎日のように口腔内あるいは腸内に投与しつづけたら寿命にはどう影響するのでしょうか?ハエを使った実験ではラウリル硫酸ナトリウム(SLS)で腸内で細胞毒性や活性酸素を発生させた群とサフランを摂取させてラウリル硫酸ナトリウムの毒性を弱めた群で比較したところサフラン摂取のハエでは寿命がのびたと報告されています[2]。
化粧品などの日用品に含まれているSLSなどの合成界面活性剤は皮膚からも浸透し約6mm程度まで浸透することが確認されています。6mmも浸透すると部位によっては筋層まで到達するくらい浸透して生きた細胞と接触していることになります。先ほども述べましたが界面活性剤が生きた細胞と接触した場合、細胞内に活性酸素や炎症性サイトカインを発生させます[4]。
また、線虫での実験では鉄などの重金属や洗剤に慢性的に暴露させると寿命を短くすることも報告されています[3]。鉄は遷移金属であり活性酸素源ですので鉄を多く摂取すると癌になる可能性が示唆されています。鉄の発がん性に関する記事に興味がありましたらこちらをご参照ください。
この報告では洗剤に含まれている合成界面活性剤に慢性的に暴露した場合、線虫の寿命を短くすることが示唆されています[3]。
まとめると、ラウリル硫酸ナトリウムのような合成界面活性剤を慢性的に摂取することは合成界面活性剤の細胞毒性と活性酸素の発生により寿命まで短くなることが示唆されていることになります。歯磨き粉やシャンプーをあえて飲む人はいないでしょうが意図せず飲み込んでいることも考えられますので気を付けた方がいいでしょう。
参考文献: