成長ホルモンやIGF-1は長寿になるか?

HGH

成長ホルモンは脳下垂体から分泌されるホルモンで皮膚や毛包などの細胞増殖、新陳代謝や治癒にかかわっていて見た目の若さを保つのに必要です[5]。そのため皮膚を綺麗に保つには深夜2時までに深い睡眠(ノンレム)に達していることが大切になります。皮膚の観点からはいいとして長寿の観点から成長ホルモンの多い少ないで違いは出るのでしょうか?興味がわきましたので医学論文で考察してみます。

身長と寿命の関係

下の図は身長の違いによる寿命を調べたグラフです[2]。

身長と寿命の関係 He Q et al.[2]

この報告によると身長が低いほど長生きする傾向があると結論付けています[2]。身長がやたら大きくなる病気といえばアクロメガリー(巨人症)ですが、この病気を持つ人は下垂体から成長ホルモン分泌が過剰で末端が肥大し下顎が前方に発達してきます。そしてアクロメガリーの人は短命であることが知られています[1]。

成長ホルモンとオートファジー

成長ホルモンは主に肝臓でIGF-1に変換され循環しますのでしばしばGH/IGF-1と表記されます。身長が低いほど長寿になるのであればGH/IGF-1の分泌低下した実験系で調べられるはずで、GH分泌を抑制したマウスは長寿になるという報告もあります[3]。IGF-1やインスリンはmTORというオートファジーにかかわるタンパクを活性化してオートファジーが起こりにくくしてしまいます。mTORは抑制すると長寿になることが知られているため成長ホルモン分泌は寿命の観点からはマイナスになると考えられます。肥満の指標であるBMIの観点からも22程度が最も長寿になるとされておりますが身長が高いとBMIは小さくなりますのでBMIの観点からも短命になるのではないかとも推測されます。

長寿の家系は成長ホルモン分泌が抑えられ厳密にコントロールされている

ヒトにおいて家系的に長寿の子孫では成長ホルモンならびにIGF-1分泌が低下し、しっかりと分泌がコントロールされていることも報告されています[4]。成長ホルモンは必要な時に必要な分量が出ることが健康に良いことが分かっていましたがやや少なめにコントロールされた家系の方が長寿になる可能性がありますね。

まとめると、成長ホルモンは皮膚などの臓器の治癒や新陳代謝を促すが寿命の観点からは負の相関が認められるということです。さまざまな観点から考察することでメリットとデメリットが見えてきますね。成長ホルモンの補充がありますが足りない人には福音ですが過剰な摂取は短命になる可能性があることを知って使うことが必要ということです。

参考文献:

  1. Pituitary gland: predictors of acromegaly-associated mortality. Ben-Shlomo A. Nat Rev Endocrinol. 2010 Feb;6(2):67-9. doi: 10.1038/nrendo.2009.267.

  2. Shorter men live longer: association of height with longevity and FOXO3 genotype in American men of Japanese ancestry. He Q et al., PLoS One. 2014 May 7;9(5):e94385. doi: 10.1371/journal.pone.0094385. eCollection 2014.

  3. Healthspan and longevity can be extended by suppression of growth hormone signaling. Bartke A. Mamm Genome. 2016 Aug;27(7-8):289-99. doi: 10.1007/s00335-016-9621-3. Epub 2016 Feb 24.

  4. Growth hormone secretion is diminished and tightly controlled in humans enriched for familial longevity. van der Spoel E et al., Aging Cell. 2016 Sep 7. doi: 10.1111/acel.12519. [Epub ahead of print]

  5. Serum insulin-like growth factor 1 and facial ageing: high levels associate with reduced skin wrinkling in a cross-sectional study. Noordam R et al., Br J Dermatol. 2013 Mar;168(3):533-8. doi: 10.1111/bjd.12131. Epub 2013 Jan 31.

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