【食事制限】タンパク質制限は長寿になるか?

Evolution of Man

食事制限は何を制限するかで長寿への影響が異なります。単純にカロリーを制限する方法や糖質を制限する方法、タンパク質を制限する方法などがあります。

現代の先進国では食べ物が余って栄養が足りないという時代ではなくなっていますがヒトの進化の歴史は飢餓の方が多かったことが示されています[1]。果実などの糖質は見つけるとそれはごちそうになるため貴重な栄養源だったですしタンパク質や脂質も断続的(間欠的)にしかありつけませんでした。このヒトの進化の過程に合わせて現代の食事を近づけることで長寿になる現象が『食事制限』です。

週に2日などの絶食でも長寿になる

実際、マウスでは1日おきに絶食したり週に2回の絶食で約30%長寿になります。また、食事の頻度や時間も決めることで長寿になることが分かっていて5時間~7時間の間だけに食事枠を設けることで長寿になります。この科学的根拠から推測すると日本の朝8時に朝ごはん、夜7時に夜ごはんとやるより朝ごはん兼昼ごはんを11時に摂って夜ごはんを6時までに摂ったほうが長寿になるということになります。

絶食といってもどの栄養素を制限すると長寿になるのか知りたいところです。その一つがタンパク質なのですが、下の図は食事制限をかけるとどのような機序で長寿になるのかをチャートにしてあるものです[1]。この中で上から2段目、右から2番目にある選択的なアミノ酸制限、つまり特定のタンパク質を食べないことで長寿になる経路があることがわかります。

食事制限と長寿のフロー図 Fontana L et al. [1]

メチオニンを少なくした食事は長寿になる

一般にタンパク質制限はmTORを抑制してオートファジーを誘導するため長寿になりますが、どのタンパク質が最も効果的なのか疑問でした。私が検索した中では硫黄を含むアミノ酸の『メチオニン』を制限すると長寿になる可能性が高いことが示されていました[2]。

タンパク質は食欲と密接な関係がありタンパク質が少ないと過食になりタンパク質が豊富な食事だと満腹します[3]。そのタンパク質量は脳で厳密にコントロールされているため最も有効なタンパク質を制限することが意志力を必要としない長寿の方法になります。それがメチオニンで肉と比べてメチオニン量が少ない大豆などのタンパク質源を活用することが考えられます。野菜はメチオニンが少ない食べ物ですので野菜をメインにしている食生活ですと豆腐や納豆といった日本人の大豆製品の普及と相まって必然的にタンパク質総量に対するメチオニン量が少ない食生活になっていると考えられます。

まとめると、食事制限で長寿になるが特定のタンパク質の制限は長寿に結びついている。含硫アミノ酸『メチオニン』が少ないと長寿になる可能性が指摘されているということです。

参考文献:

  1. Promoting health and longevity through diet: from model organisms to humans. Fontana L et al., Cell. 2015 Mar 26;161(1):106-18. doi: 10.1016/j.cell.2015.02.020.

  2. Methionine restriction and life-span control. Lee BC et al., Ann N Y Acad Sci. 2016 Jan;1363:116-24. doi: 10.1111/nyas.12973. Epub 2015 Dec 10.

  3. Central Amino Acid Sensing in the Control of Feeding Behavior. Heeley N et al., Front Endocrinol (Lausanne). 2016 Nov 23;7:148. eCollection 2016.

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