長生きするためには細胞の老化を食い止めることが必要だと考えられますが、細胞の老化とはなんでしょう?ミトコンドリアなどの細胞内のオルガネラ(小器官)の機能の劣化や数の減少は加齢とともに増えてきますし、DNAが活性酸素ダメージを受けるとDNAにコードされているタンパク質がおかしなものができてくるためこれも細胞の老化です。つまり異常なものの堆積と正常なものの減少が細胞の老化と言えると思います。
ではDNAに異常がなく健全なタンパク質が作られるならば長寿になるのか?という疑問がわきますので科学論文で検証してみます。
細胞分裂を正確に行うBubR1が増えると長寿になる
私たちの細胞は細胞分裂して数と機能を保っています。このときDNAも複製されて同じ細胞が2つできるのですがこのとき必ず正確にコピーされているかチェックが入ります。
細胞分裂(有糸分裂)の様子。
染色体のチェックをするものはいくつかありますがその中の一つに『BubR1』があります。BubR1は細胞分裂(有糸分裂)が正確に確実に行われているかをチェックする因子です[1]。老化とともにこのBubR1が減ってくるため異常なDNAができやすくなります。BubR1が減っていると早期に老化現象が起こりガンも増えるためBubR1を増やすと長寿になるのではないかと考えるわけです。実際にマウスの実験でBubR1を過剰に発現させると寿命が延びる[1]ことが報告されています。
サーチュイン・NMNはBubR1を増やす
ではこのBubR1を増やす方法はないのでしょうか?長寿遺伝子として有名な『サーチュイン(SIR)』はSIR1~7までありますが、SIR2を増やすとこのBubR1が増えることが分かりました[2]。サーチュインと言えばぶどうやピーナッツの皮に多く含まれているレスベラトロールで活性化されます。
このレスベラトロールはNADという物質が必要なことで知られておりNADの前駆体であるNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)を食べると同様にBubR1が増えます[2]。以前レスベラトロールに焦点をあてた記事を書きましたので興味がある方はどうぞ。
まとめると、細胞分裂が正確に行われるようになると長寿になるということです。BubR1は染色体が分裂するときのチェックポイントで活躍する因子でBubR1が増えると実際に長寿になります。サーチュイン2やNMNはBubR1を増やすため長寿になると考えられます。
参考文献: