皮膚や口腔、腸管などあらゆる表面には細菌がみっちり生活しており部位特異的に特徴のある細菌叢であることが知られています。今回は老化とともに細菌叢が変化しますので長寿になる人の細菌叢にはどのような特徴があるのだろうと興味がわきましたので医学論文で調べてみました。
人間の長寿の研究は実際の人でやる場合には相関関係を出すことによるものが多いのですがやはりマウスや線虫、ハエといったほかの動物種を使って原因を特定することも有益な示唆を与えてくれますのでその示唆を私は自分のライフスタイルに組み込むこともあります。
枯草菌は線虫の寿命をのばす
細菌の一つ枯草菌は線虫を使った実験において長寿になる[1]ことが示されており、その原因はIGF-1を阻害することによる経路だったとの報告があります。IGF-1はインスリン様成長因子のことで受容体に結合するとmTOR(エムトール)という長寿にかかわるタンパクを活性化してオートファジーが起きにくくなります。逆にIGF-1を抑制してやるとmTORも抑制されるのでオートファジーが起こり長寿になる経路です。
抗炎症作用を持つ細菌が長寿の人には多い
人は加齢とともに体内の炎症レベルが上がるので老化の指標の一つにもなります。腸内細菌は70歳くらいまでの成人は同じような構成なのですが100歳を超えると腸内細菌は異なってきます[3]。腸内細菌の主な種類(門)の一つファーミキューテス門の細菌構成が変化したり、病原性嫌気性菌の濃度が高くなってきます。また、抗炎症作用を持つフィーカリバクテリウム属が顕著に減ってきます。その結果でもあるのでしょうが100歳を超えてくると顕著に末梢血における炎症マーカーが増えることになります。
一方、長寿になる人が多い村と都市部の高齢者の腸内細菌を調べた報告があり、長寿の村の腸内細菌には先ほども登場した抗炎症性のフィーカリバクテリウム属の細菌が多く、内毒素(LPS)も少ないとの結果でした[2]。また、もう一つユーバクテリウムも抗炎症性の細菌で長寿の人に多いため長寿の指標になる可能性が指摘されています[3]。
こうした抗炎症性の細菌が腸内に増えると皮膚など抹消でも炎症が軽減されて見た目だけでなく全身の老化も抑えられ長寿になる可能性があります。
つまり、長寿になる可能性がある細菌がありその中には枯草菌やフィーカリバクテリウム属がある。100歳を超える人の腸内細菌は成人期のそれと異なってくるが100寿者の細菌叢でも上記の細菌が増えると長寿になることが示唆されているということです。
参考文献: